身体知覚とは?
身体知覚とは、自分の身体の状態に関する知覚のこと。
例えば、自分の指先がどこにあるか、どれくらいの速度で動いているか等、自分の身体がどのような状態にあるかの知覚です。
視覚や体性感覚(皮膚、関節や筋肉の近辺にある感覚器官から得られる情報)などの感覚情報を統合することで知覚されます。特に、筋肉中に存在する筋紡錘という感覚器から得られる情報は重要です。
身体知覚の錯覚
身体知覚が錯覚を起こす例には以下のようなものがあります。
鼻が伸びる!?
- 自分の鼻をつまんだ状態(当然腕が曲がった状態)で、腕が伸展するような振動刺激を与えると、鼻がどんどん高くなるような錯覚が生じる。
- 腰に手を当てた状態で腕の運動錯覚を生じさせると、ウエストのサイズが大きくなったり、小さくなったりする錯覚が生じる。
ラバーハンド錯覚
片方の手を被験者から見えない状態にして、代わりにゴムの手を、まるで被験者の手であるかのように配置します。そして、ゴムの手と被験者の手を同時に筆でなでる等していると、被験者はやがてゴムの手が自分の手であるかのように感じ始めます。


被験者がゴムの手を自分の手とみなすようになった後、ゴムの手に針を刺すなど脅かす行為をすると、自分の手が脅かされたように不安に関連する脳活動(島皮質、前帯状回の活動)が見られます。
錯覚を感じているときには、ゴムの手に置き換えられた手の体温が下がります。錯覚を起こしやすい人ほど体温低下が大きいそうです。
幽体離脱!?
ビデオカメラを被験者の背後、数mの位置に置き、背中の映像をVRゴーグルで見せます。


- 被験者の背中をペンでなぞると、VRゴーグルには数m先にある自分の背中がペンでなぞられている様子が移るため、数m先に自分の身体があるように感じられる。
- 被験者の胸を棒でつつくと同時に、別の棒をビデオカメラの少し下のほうで動かすと、VRゴーグルに映った映像では、目の前の棒が自分の胸のあたりをつついているにもかかわらず、自分の背中も見えているという状況であるため、背後のカメラの位置に自分がいるように感じられる。
要はこういうこと↓です。

参考文献
- 今水 寛 (2013). 身体知覚 日本認知心理学会 (編) 認知心理学ハンドブック (pp.48-51) 有斐閣