ベロンッ
この味は!………ウソをついている「味」だぜ……
ジョルノ・ジョバァーナ!
ジョジョの奇妙な冒険5部、ブチャラティが初登場回で言ったセリフです。
~流れ~
パッショーネの構成員である「涙目のルカ」が重傷を負う事件が発生しました。その事件の犯人を突き止めるため、ブチャラティは、容疑のかかっているジョルノ・ジョバァーナに接触します。ブチャラティは、汗で相手の嘘を見抜ける特技を持っているということをジョルノに予め伝えた上で、「涙目のルカ」に会ったかどうか質問します。しかしジョルノは、汗をかくことなく「会っていない」と噓をつきました。それを見て嘘をついていないと判断したブチャラティは一度その場を去るふりをします。しかし、ブチャラティのスタンド能力により、ジョルノの左手にはルカの目玉が握らされていました。それを見て驚いたジョルノは思わず汗をかきます。そして、ジョルノの汗をなめてブチャラティは上のセリフを放ちます。
ブチャラティは汗で相手の嘘を見抜ける特技を持っていると言っており、実際にその特技を披露しました。
しかし、汗を舐めるだけで本当に嘘を見抜けるのでしょうか。
今回は生理学的観点からも考察したいと思います。
汗の種類
まずは汗についての基本的な情報を見ていきましょう。
温熱性発汗
体温の恒常性を維持するための発汗
全身の有毛部及び無毛部から発汗します。
交感神経系が関与しています。
精神性発汗
緊張などの精神的な興奮による発汗
主に無毛部から発汗します。
手のひら、足の裏、腋、股間、額の発汗が顕著。
交感神経系が関与しています。

ジョルノが流した汗はこの精神性発汗だね。
味覚性発汗
刺激物を食べたときの発汗
顔面や頭部からの発汗が顕著。
交感神経系及び副交感神経系が関与しています。
汗腺について
上記いずれの種類の汗も、基本的にはエクリン腺からの発汗です。
しかし、精神性発汗は一部、アポクリン腺からも発汗します。
エクリン腺
主に存在する部位
全身に分布しています。特に、手のひら、足の裏、額などに多いです。
汗の特徴
- 99%以上が水分
- 残りは塩分や電解質
- 無臭
- 蒸発して体温を下げる役割
アポクリン腺
主に存在する部位
わきの下、乳輪、陰部、肛門周囲などの特定部位に集中しています。
汗の特徴
- 70~80%が水分
- 残りは、脂質、タンパク質、ステロイド、糖類
- アルカリ性
- 最初は無臭→皮膚常在菌による分解で臭いが生じる
ここまでの考察
人は嘘をつく際、精神的に興奮します。「バレたらどうしよう」という緊張、相手を騙していることへのワクワク感などによるものです。そして精神的に興奮すると、精神性発汗を起こします。
相手が嘘をついているかどうかを判別するには、相手が精神性発汗を起こしているかどうかを確認すればよいということです。
汗は基本的にエクリン腺から出ますが、精神性発汗においてのみ一部がアポクリン腺からも出るとのことでした。また、アポクリン腺からの汗は、エクリン腺からの汗と成分が異なります。
相手が精神性発汗を起こしているかどうかは、アポクリン腺からの発汗があるかどうかを確認すればよいということです。
ブチャラティは、ジョルノがかいた汗を舐め、その味から判断していました。
つまり、ブチャラティはアポクリン腺からの汗が含まれているかどうかを味覚で判別したということになります。
ちなみに、顔のアポクリン腺は、まぶたのまつ毛の根本部分にあるMoll腺のみです。
なので、ジョルノの頬についていた汗にアポクリン腺からのものも含まれていたとすると、それはまぶたから出てきたものということになります。

ヒトの味覚の限界
ブチャラティはアポクリン腺からの汗が含まれているかどうかを味覚で判別した、とのことでしたが、ヒトの舌に可能なことなのでしょうか。
結論から言うと、基本的にほとんど判別できませんが、理論的に可能性はあります。
エクリン腺からの汗は、Na+やCl-といった電解質が含まれるため、塩味が多少感じられます。一方、アポクリン腺からの汗が含んでいるのは脂質やタンパク質であり、それらは味覚として感知されにくいです。舐めてみてしょっぱければ、エクリン腺。塩味が感じられなければ、アポクリン腺。ということになります。
しかし問題は、精神性発汗はエクリン腺からもアポクリン腺からも起きるということです。
そうなると話が変わってきます。単なる塩味の有無のみでは判断することができません。塩味の強さの程度から判断できればいいのですが、それはほぼ不可能と言ってもいいでしょう。
ブチャラティの味覚がよっぽど優れていない限り、アポクリン腺から発汗したかどうかを判別することは不可能ということになります。
ちなみに、アポクリン腺からの汗は、皮膚上の常在菌によって分解されると特有の臭いを発生させます。なので、アポクリン腺からの汗が長時間皮膚上に存在していたのであれば、識別できる可能性もあります。
結論
以上のことから、ブチャラティの発言はハッタリや言いがかりであった可能性が高いです。
また、仮にジョルノの精神性発汗を見抜けていたとしても、そもそもジョルノはいつの間にか自分の手に目玉が握られていたことに動揺したのであって、嘘をついたことによるものではないとも考えられます。